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GK育成スペシャリスト / エルナン・エラリオの実戦!ゴールキーパークリニックvol.2『最高のGKになるには“視覚力”を鍛えよ』〜U12選手向け〜

前回の記事で「現代GKに課せられる役割」について語ってくれた、アルゼンチンでGK専門パーソナルコーチとしての地位を確立しているエルナン氏。

彼は、南米代表選手からパーソナルトレーニングの依頼が届くほどのトレーニングメソッドを導き出しています。そんなエルナン氏から今回は、U12世代を対象とした日本のGK選手たちへ、アドバイスを伝授してもらいます。

20年を超えるGK専門パーソナルコーチとしてのキャリアから導き出された考えや、良いGKになるための取り組み方、GKに必要な能力についての考えは必見です。

GKというポジションの価値や役割、トレーニング法、メンタルの保ち方、コーチがGKとどのように関わるべきかなど、今後もGKにまつわる話を、月に1度程度でお届けしていきます。

▼エルナン氏のコーチング風景▼

生年月日:1978年7月9日(44歳)
出身地:アルゼンチン

指導経歴(アルゼンチン1部リーグ):2005 ウラカン/2006-2010 べレス・サルフィエルド/2011-2013 ティグレ/2014-2018 CAバンフィエルド/2019-2021 ヒムナシア・デ・ラ・プラタ/インターナショナル・オブ・ゴールキーパー ディレクター

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-あなたがU12のGKを育成する場合、特にどのような能力を重要視しますか?

「技術」と言って欲しそうですね。ですが違います。もちろん技術は重要ですが、それだけが重要と言い切ることはできません。技術、戦術、ポジショニングの全てが大切です。

ですが、脳に到達する最初の情報は目から入るため、状況とボールを捉える「視覚力」や、正しい判断を行う方法を知ることが特に重要だと考えています。

GKとして良いプレーするためには、正しくボールを止め、ゴールを守る必要がありますよね。そのため、ボールをよく見ることが一番重要なのです。

現代サッカーではテクニックが重要視されるあまり、たとえ世界レベルの試合でも、ボールを見る方法を理解していないGKがいます。

世界トップレベルの選手でさえ、自チームのディフェンス状況がどうなっているかを気にするあまり、ボールを見失ってしまうのです。

W杯の南米予選、パラグアイ対チリ戦を例にあげます。パラグアイのコーナーキック時、チリのGKは、自チームのDFがしっかりとマークしているかばかりを気にかけており、コーナーキックのボールを見ていませんでした。

コーナーから出たボールは、ニアサイドで合わせられ、簡単にゴールを許してしまいました。このプレーは「まずはボールをよく見る」という基本的なことを疎かにしたことにより起きたミスです。ボールから決して目を離してはいけません。

-アルゼンチンでは、U12のGKに何を教えているのでしょう。

アルゼンチン全体としての取り組みは多岐にわたるので、端的には答えられません。とは言え、私が特に重要視しているのは「視覚力」を鍛えるトレーニングです。

私にとって「視覚」は、技術と共に最も重要な要素です。見るべきものを捉え、認知する力が高ければ、素晴らしいGKになれると信じています。

その場で勝手な判断をしないこと、ボールがゴールに届かない場合は体を安定させ、ポジションバランスを崩してはいけません。GKとしてのポジションバランスを崩せば、相手はその動きを察知し、逆サイドにボールを蹴り出すでしょう。

GKがゴール前に立っていて、相手FWが左側にシュートを蹴ろうとしたとします。そこでもし即座に判断し、左側に飛んでしまえば、相手はすぐさまシュートを止め、動いた方とは逆にボールを蹴ることでしょう。そうなってしまったら、FWにとって、非常に有利な状況を作ってしまうことになります。

だからこそGKは、最後の最後まで、集中力と正しいポジションを保たなければならないのです。集中力とポジショニングを保ち、ボールをよく見る。そこから次の判断を下す、そのことが、いいプレーをするためのベースになります。


今回のオンライン取材での様子

-U12世代のGKには、どのような練習が効果的ですか?

ゲームの要素を取り入れた、遊び心のあるトレーニングが効果的ですね。

この世代の子どもたちはよそ見をしたり、動いたものに気を取られたりと、注意力が散漫ですよね。 GKとして成功するために最も大切な要素は、集中力です。

ゲームの要素を取り入れることにより、子どもたち自らが夢中になれる環境を作ります。

注意が散漫な子どもに対して、大人があれこれ言うことは、あまり効果的ではありません。指導者である私たちが、集中を途切れさせない環境を、作ってやる必要があるのです。

また、遊びの要素を入れることには、もう一つ理由があります。

それは「選手のプレッシャーを和らげる」ことです。GKとしてプレーするためには、勇敢である必要があります。

ゴールマウスは、高さ2.44メートル、幅7.32メートルです。そこをたった一人で守り、チームの最後の砦となるのです。1つのプレーでヒーローになることもあれば、悪役になってしまうこともあります。

そのような状況でプレーすることは、たとえ子ども同士の試合でも、簡単ではありません。GKとしてプレーする子どものプレッシャーを少しでも和らげられるよう、トレーニング中はもちろん、私生活でも彼らに接する必要があると考えています。

-具体的にどのようなトレーニングをしているのでしょう?

数字や色、文字、さまざまな色のボールなどを使って、脳の機能を向上させるトレーニングをよく行いますね。

例えば、赤、黄、緑のテニスボールを3個空中に投げます。そこで「緑」と言ったら緑のボールをキャッチ、残り2個のボールには触れないというような練習です。 視覚・集中・反応を鍛えるために、このような練習を繰り返し行います。

また、負けん気を鍛えるための練習もとても重要です。負けたくない気持ちを刺激するために、あえて競争させるメニューを組みます。例えば、2人のGKを対峙させ、互いから均等の距離に一つのボールを投げ入れ、キャッチを競わせます。

そういったトレーニングでライバルに勝つ自信を芽生えさせます。また、どのように飛べば自分が有利になるか、などを理解するにも絶好の機会となります。

そういった競わせる練習を繰り返すことにより、強い個性・勝者のメンタリティを向上させることができます。

-GKとして頑張る日本の子どもたちにメッセージをお願いします

私は、アルゼンチン1部リーグでプレーするカルロス・ランペ(ボリビア代表)、イバン・マウリシオ・アルボレダ(コロンビア代表)など、国際レベルで活躍する選手を7人以上を育ててきましたが、彼ら全員に同じことを言っています。

目標を達成するために、3つの基本的な柱があると。それは「良いトレーニング、良い休息、良い栄養」です。
最低8時間は寝て、次の日の練習に備えましょう。トレーニングだけではなく、休息と栄養を心がけることにより、夢に近づくことができます。
GKは難しいポジションです。ですが、そこにチャレンジするということは、とても素晴らしいことです。毎日の練習を真剣に取り組み、楽しみながらプレーしてください。


イバン・マウリシオ・アルボレダ選手(コロンビア代表)とエルナン氏

To Be Continued……月に一度(不定期)掲載を予定しています

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