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GK育成スペシャリスト / エルナン・エラリオの実戦!ゴールキーパークリニックvol.4『一番のトレーニングは休息である』〜U18選手向け〜

前回の記事「最高のGKになるには“視覚力”を鍛えよ」で、「見る」という行為の重要性について語ってくれた、アルゼンチン人のエルナン氏。

今回のインタビューでは、U15のGKにとって大事なことについて言及してくれました。

思春期の真っ只中である15歳という年齢で取り組むべきことから、彼らを教える指導者まで、幅広い視点でGKというポジションを捉えている育成スペシャリスト・エルナン氏のアドバイスは必見です。

GKというポジションの価値や役割、トレーニング法、メンタルの保ち方、コーチがGKとどのように関わるべきかなど、GKにまつわる内容を、月に1度程度でお届けいたします。

▼エルナン氏のコーチング風景▼

生年月日:1978年7月9日(44歳)
出身地:アルゼンチン
指導経歴(アルゼンチン1部リーグ):2005 ウラカン/2006-2010 べレス・サルフィエルド/2011-2013 ティグレ/2014-2018 CAバンフィエルド/2019-2021 ヒムナシア・デ・ラ・プラタ/インターナショナル・オブ・ゴールキーパーのディレクター兼Acumen (ハイパフォーマンス・トレーニングセンター・フォー・フットボールプレーヤーズ) のコーディネーター

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–U18という年代は、GKにおいてどのような年齢にあるのでしょう?

U18の選手は、技術的な側面について、ほぼ成長し終えた段階にあると言えます。

ボールを正しくキャッチする方法・ボールを弾く際の動き方や飛び方・パントキックなどの基本技術を、すでに身につけている必要がある年代ということです。

技術的に完成されつつある選手が次に習得すべきことは「さまざまな状況下で正しい決断をする能力」だと考えています。

これを習得するには、ゲーム中に起こり得る幾多のシチュエーションを想定したトレーニングが有効的です。

私がよく行う練習を説明しますね。まず私がボールを天に向かい高く蹴り上げます。そのボールをGKがキャッチしたら、私が「右」または「左」と叫びます。GKがボールをキャッチして、地面に立った瞬間に、私が叫んだ方向へ素早くパントキックを蹴るというものです。

闇雲にトレーニングを行うのではなく試合と同じよう状況下で、反応したり判断を必要とするトレーニングを行う必要があります。

試合と同じような状況とは、チームの監督が描いているゲームプランに基づきます。

後方からパスを繋ぎ、ボールを保持しながら前進するスタイルを好む監督は、GKもビルドアップに参加することを求めます。その場合、GKでも両足をうまく使ってボールをコントロールし、パスを出すべき味方を状況によって選択できるようにトレーニングしましょう。

反対に、速攻やカウンターを好む監督には、GKにポゼッション能力はあまり求められませんよね。その場合は、DFを飛ばして一気に中盤の選手やFWの選手に正確なロングフィードを出せるよう、キックのトレーニングに時間を割くことになります。

チームのプレースタイルに合わせたトレーニングを行うことが、パフォーマンスを出すために必要な条件なのです。

–この年代では、何が一番重要なのでしょうか?

この年代で一番重要なのは「良いプレシーズン期間」です。良いプレシーズンが、その選手の1年間を通したパフォーマンスを決めるといっても過言ではありません。

ここ南米ではどのカテゴリーでも、1年間に2回のプレシーズンを行うクラブが多いです。その期間内に、フィジカル・技術・戦術・メンタルを鍛えます。強度の高いトレーニングを20日から30日間、1日2回ほど行うんですよ。

休みモードの身体からリーグ戦で戦う戦闘モードへ移行する準備期間です。

プレシーズンが開始してからフィジカルの強度を徐々に高めていき、リーグ戦が開始する数日前を目安に強度を落とす流れが一般的ですね。

グラフにすると、山のように見えるような強度を意識するようにします。プレシーズンは選手の成長を決定づけるものだと私は考えています。

U18の選手のプレシーズンでは、この時期に一番成長しやすい、フィジカル的な要素に重点をおいてトレーニングするとよいでしょう。

エルナン氏独自のトレーニングメソッドは、年代・状況等で細分化されている

–GKにとって「良いプレシーズン」とは、どのようなものか教えてください

良いプレシーズンとは、フィジカル・技術・戦術・心理の3要素をバランス良く取り入れたトレーニングスケジュールを組むことです。

怪我を避けつつ、ジャンプ力や横に飛ぶ脚力を鍛えるために、私は砂場でのトレーニングをよく行います。

GKのプレシーズンでは、まずジャンプ力や強さといった、プレーする上で基本となる能力を鍛えます。

次に反応速度や敏捷性、ポジショニング、急いでボールに対応しなければならない際の正しい技術など、より細かな状況に対応するためのトレーニングを行いますね。

プレシーズン後は、大会のスケジュールに合わせたトレーニングを行っていくのです。

リーグ戦期間は、ハードに追い込むトレーニングをするというよりも、試合での悪かったところを分析、改善するような修正作業を行います。

–フィジカル・技術・戦術を鍛えるというのは簡単にイメージできますが、心理的な要素はどのようにトレーニングすることで養われるのでしょうか?

科学的に正しい心理的アプローチをとるのです。
アルゼンチンには、選手の心理面をケアし能力を最大限発揮させることができるよう、スポーツ心理学者を雇うクラブが多くあります。

その心理学者が、週に1回トレーニングの前か後に、セッションを設けるのです。そこでは共通の目標設定を立てたり、サッカーに関する質問に答えたりしながら、自分やチームメイトの理解を深めていきます。

たとえば「試合開始早々に失点をして0-1の状況になったらどうするか?」「後半終了1分前に失点してしまい、0-1の状況になったらどうするか?」という質問を心理学者が選手に質問し、それぞれに答えてもらうというものです。

そのほかにも、家庭環境に関する質問もありますし、彼女や彼氏がいる選手には、恋愛に関する質問もあるんですよ。

選手の心理は、さまざまな要素で構成されていますからね。もちろん、そのセッションで話されたことには守秘義務が適用されます。プライバシーが関わるので、たとえ監督でも知り得ることができません。

–日本の育成年代には、プレシーズンと呼べるものがありません。1年中トレーニングや練習試合をしています。プレシーズンが終わったらリーグ戦が始まることはわかりますが、その前には何をするのでしょうか?

プレシーズンの前には、3週間から4週間の休暇があります。その期間中にサッカーをすることはないですし、チームの活動もありません。それはここアルゼンチンやブラジル、コロンビア、チリなど南米をはじめ、ほとんどの国でも同じです。

3週間から4週間の休暇を取るのは、1年間戦った身体とメンタルを休めるためです。

年間を通し、毎週末に自分のキャリアをかけた戦いは、精神的にも身体的にも大きな負担となっています。なので、シーズンが終わったら、翌年も高いモチベーションでいられるため、精神面と身体面をリフレッシュさせるのです。

アルゼンチンでは、ホテルやペンションのような施設を持っているクラブもあります。アルゼンチン中から選ばれた選手が、その保養地で生活するのです。

たとえばリバープレート(アルゼンチンの名門クラブ)は、U13,U15,U18の選手が合計120名ほど生活できるホテルを所有しています。その120人の選手はシーズン中、クラブで生活をします。

そこでは1日4回の食事を出し、栄養士が選手たちの食事を管理します。そこに心理学者も駐在しており、選手の心理状態のケアも行うのです。若い選手が家族と離れて暮らすことは簡単ではありませんからね。

ですが休暇になると、選手は家に帰り、休暇をとります。休暇の期間は、家族との時間を過ごすことや、友達との関係を作ることに充てます。人生はサッカーだけで構成されていませんからね。

–日本の育成年代には長期の休みがありません。休むことは悪で、自分を追い込むことは素晴らしい、という美学があります。休むことを罪悪感に感じる私たち日本人に、何かアドバイスはありますか?

それぞれの国には文化があるのでなんとも言えませんが、日本の皆さんに共有したい話しがあります。

イギータ(元コロンビア代表GK)とチラベルト(元パラグアイ代表GK)と私の3人で食事をしている際に「良い練習とは何か」というテーマについて話しました。

その際に彼らは「一番良いトレーニングは休息である」と言っていました。

毎日ハードなトレーニングをしても、筋肉を休めなければ、トレーニングの内容を脳と筋肉が記憶することはできません。回復するのに十分な時間がなければ、ハードなトレーニングも逆効果になってしまうのです。生理学的な観点から見ても、身体は夜寝ている間に回復するので、十分な休息を取らなければなりません。

休むことに罪悪感を感じてはいけません。休息を取らないと、トレーニングによって破壊された体細胞が再生されず、成長することができないです。それは生理学的にも証明されていることです。

トレーニングは、休息という要素の上に成り立ちます。休息の間に筋肉が成長し、脳は筋肉の動きを記憶します。常に高い負荷を与えるのではなく、適切に休息を取り、身体を回復させることで、次のトレーニングに備えることができます。

–日本のU18のGKに向けて、メッセージをお願いします

ハードなトレーニングをしたら、その後はしっかり休んでください。

トレーニング強度が上がるほど、休息の時間も多くとる必要があります。日本の選手のプロ意識は素晴らしいですが、度を越すと怪我につながったり、燃え尽きてしまうことがあります。

バランスをとりながら科学的にトレーニングしてみると、さらなる自己成長につながりますよ。

To Be Continued……月に一度(不定期)掲載を予定しています

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