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GK育成スペシャリスト / エルナン・エラリオの実戦!ゴールキーパークリニックvol.5『優れたGKコーチの条件』〜GKコーチ向け〜

前回の記事「一番のトレーニングは休息である」で、「意図的に休む」ことの重要性について語ってくれたエルナン氏。

今回のインタビューでは、GKコーチとして大切なこと、について話してくれました。

優れたGKコーチの条件や選手との関わり方、どの選手にも教えているサッカーをプレーする上で大切なことまで。幅広い視点でGKコーチとしての役割をとらえているエルナン氏のアドバイスは必見です。

GKというポジションの価値や役割、トレーニング法、メンタルの保ち方、コーチがGKとどのように関わるべきかなど、GKにまつわる内容を月に1度程度お届けします。

▼エルナン氏のコーチング風景▼

生年月日:1978年7月9日(44歳)
出身地:アルゼンチン
指導経歴(アルゼンチン1部リーグ):2005 ウラカン/2006-2010 べレス・サルフィエルド/2011-2013 ティグレ/2014-2018 CAバンフィエルド/2019-2021 ヒムナシア・デ・ラ・プラタ/インターナショナル・オブ・ゴールキーパーのディレクター兼Acumen (ハイパフォーマンス・トレーニングセンター・フォー・フットボールプレーヤーズ) のコーディネーター

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–初めに「優れたGKコーチの条件」を教えてください

私が大切にしている要素は2つあります。

 

1つ目は、GKに求められる全ての能力(フィジカル、戦術、技術、メンタル)についての知識があり、どうやってそれぞれの能力をトレーニングするかを理解していること。

2つ目は、試合の勝敗に限らず、選手の感情を動かすコミュニケーションができること。

 

この2つの要素が必要です。どちらも欠かすことができませんが、特に私が重要視しているのは2つ目です。

残念ながらGKは、失点と共に生きています。キャリア中では、たくさんのゴールを決められてしまいます。ゴールを決められても気にしない選手もいれば、ゴールを決められてしまったことを必要以上に悔やむ選手もいます。
選手が落ち込んでいる時に、選手をいかにサポートできるかがGKコーチとしての腕の見せ所です。GKの良い友達でいる、といったイメージでしょうか。

私たちGKコーチは、全ての練習でGK選手たちと時間を過ごしますよね。
共に過ごす時間の中で、私たちは選手たちの親友であり、同時に父親のような存在でもあるんです。いずれにしても、選手と真摯に向き合い、多くの時間を共にすることがとても大切だと思います。

–GKの育成において鍵となる要素はなんでしょう?

技術・戦術・メンタル・フィジカルを継続的に改善することです。
選手がこの4つの要素を高いレベルで備えることができれば、目標達成までグッと近づきます。

簡単なミスで失点をしてしまうこともあるでしょう。そのようなことが起きたら、二度と同じミスをしないよう、トレーニングしなければいけません。

GKは「失点から学ぶ」ポジションです。ゴールを許す度に、悔しさが込み上げるでしょう。その思いをバネに成長し続ける必要があります。

–選手に自信を与え、さらなる成長を促すために、選手とはどのように関わっていますか?

まずは、練習中に選手が見せる「小さな反応」を注意深く観察します。
観察することで、選手個人の特性や性格を分析するのです。過去のインタビューでも話していますが、選手はそれぞれ違う人間です。いい結果を出すためには、各選手のモチベーションを理解し、それぞれに合った方法でコミュニケーションを行わなくてはいけません。選手によってアプローチを変えるのです。

そして、常に良い振る舞いをする、ということを心がけてください。
アドバイスをしたり注意したりする際は、考えうるベストの方法で行わなくてはなりません。選手に親切な言葉をかけ、親身にサポートしようとしている姿勢を見せるのです。

練習中、もしゴールを決められてしまったら「気にするな、問題ないぞ。練習は成長するためにある。ミスから学べばいいさ」というように選手へ声をかけ続けることが大切です。

GKが試合でミスをしたら負けてしまいます。しかし、練習ではそんなことはありません。練習でミスをしても、リベンジすることができます。

練習中のGKコーチの役割は、選手が自信を持ってプレーするために、心理的なサポートをすることです。選手に対して、常に明るくポジティブな声がけをしていくと、選手のパフォーマンスも上がってきますよ。

–選手の才能や強みは、どのように見つければよいですか?

才能は歩んできた環境に左右されるものです。
選手の才能がどのような状況で発揮されるのかを見極めてください。
コーチたちの枠組みで選手をとらえず、選手の内にあるものを理解しようとする姿勢が大切です。

さまざまな種類の才能があります。反応が速い選手がいれば、賢い選手もいますよね。
また、足元の技術が高い選手やプレーのビジョンを持っている選手、いつ何が起こるのかを予測できる選手もいますよね。選手の性質によって、才能が発揮される状況や、才能の種類は違うのです。

たとえば、あなたが技術的な才能を持っているGKだとしましょう。
技術的な才能はあるものの、フィジカル的な才能が欠けていた場合、私はコーチとして、あなたのフィジカルを強化する必要があります。あなたの才能である技術を、より伸ばすことはしません。

コーチである私の仕事は、才能以外の能力の向上をサポートすることです。

–エルナンコーチにとって「弱みの向上」は「才能を磨く」よりも、育成年代では重要ということでしょうか?

もちろんです。この問題は多くのコーチが陥りやすいポイントです。
才能が本物であるなら、放っておいても勝手に伸びていきます。しかし、弱点はそうはいきません。

選手の強みだけを伸ばしていたら、限られた状況下でしか才能を発揮できない、極端な選手になってしまいます。一昔前は、それでもプロサッカー選手としてやっていけていましたが、現代のGKはあらゆる能力を要求されています。極端な選手ではなく、全ての能力が総合的に高い必要があります。

私たちコーチの役割は、選手の弱点を減らし、選手の才能をより多くの状況で発揮できるようにすることです。

–弱みの強化以外に、選手へ教えている「大切なこと」はありますか?

「賢くプレーすること」を教えています。フェアプレーは大切ですが、常にフェアプレーをする必要はありません。コーチの私が声を大にして言うことではありませんが(笑)。

サッカーというスポーツは、いかに自分たちにとって有利な状況を作れるかで勝負が決まります。それならば、自分達にとってより良い条件でプレーできるよう考えなくてはなりません。

たとえば、私とあなたが、サイドライン付近でボールを奪い合っているとしましょう。
私にボールが当たってラインを割りました。しかし私は、あたかもあなたにボールが当たってラインを割ったかのように、勝手にスローインを投げます。これがアルゼンチンの常識です。

今話したのはあくまで1例ですが、サッカーはゲームです。
勝負に勝つためには、賢くプレーしなければいけません。

ゲームをジャッジするのは審判です。審判が自分達に有利な判定を下すよう「審判をあざむくプレー」を知る必要もあります。たとえ相手ボールであったとしても、あたかも当然のようにマイボールとしてプレーをすれば、審判は判断を誤るかもしれませんよね(笑)。

審判の心理を理解し、審判を巻き込むのです。
このようなことばかりを教えるのは良くないですが、勝つためのテクニックを選手に教えることも、コーチとしての重要な役割だと思います。

–日本でそのようなことを教えると、批判が出そうです(笑)。しかしそれと同時に、日本人が一番学ばなければいけないことであるようにも思います

「どうすれば自分たちが有利になるか」ということを理解し、賢くプレーする術を身につけることができれば、日本は世界でも指折りなチームになることでしょう。

既に、日本の選手にはポテンシャルがあります。まじめで勤勉ですし、コーチの言ったことを理解できる。スピードとテクニックを兼ね備えている選手が多くいますよね。
必要なものは全て揃っているではありませんか。

賢くプレーする術について、小さい頃から身につけておく必要があります。
5歳や6歳くらいの時期から学ばせるのです。フェアプレーの観点から考えると、声を大にしては言えませんが、ゲームや勝負で勝つにためには必要なことです。

–最後に、日本のGKコーチへメッセージをお願いします

選手は一人として同じ人はいないので、柔軟性を持ち指導をしてあげてください。厳しくしすぎないように。

GKは一番プレッシャーのかかるポジションです。一番プレッシャーのかかるポジションでプレーしているにも関わらず、さらにプレッシャーを与える必要ありません。

GKコーチの役割は、選手のプレッシャーを和らげてあげることです。
大変なことも多いと思いますが、お互い頑張りましょう。

To Be Continued……月に一度(不定期)掲載を予定しています

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