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元ラグビー日本代表主将・菊谷 崇インタビューVOL.4『アスリートの主体性を導き出すコーチング』

今回は、全4回にわたるインタビューの最終話となります。

1980年2月24日生まれ 奈良県出身

身長187cm/体重100kg(現役時)

御所工業(現・御所実業)高校入学後にラグビーを始める。大阪体育大学を経て、2002年にトヨタ自動車に入社。2014年、キヤノンイーグルスに移籍、イングランドのサラセンズでもプレーした。2005年に日本代表初選出、2008年からはキャプテンを務めた。2011年のW杯に出場、2005年7人制W杯にも参加。日本代表キャップは68(歴代5位)。現在は株式会社Bring Up Athletic Society代表取締役を務める。


――現在の仕事について教えて下さい。

野球、陸上、アイスホッケー、ラグビーの4つ競技のアカデミーを運営する会社をやっています。会社の大きな目的は、コーチが学び合う環境を作ることです。ラグビー単体にせず、あえて他競技と一緒にやっているのは、そういうことですね。

――指導者になろうと決意した時、最初から育成年代を教えようと思っていたのでしょうか?

トップリーグでやろうと思っていました。引退する時、実際にお話ももらっていました。最終的に、トップリーグのコーチをするのか、アカデミーのコーチをするのか、その二択で悩んだのですけど、2019年W杯の前に、アカデミーの事業として仕掛けたいなと思いました。トップリーグのコーチとして3年から5年やって、終わってから何もないという状況は、人生のプランとしては難しいと考えました。アカデミーを作って、いいものを提供して、何か次のステップにつなげようと思ったんです。高校代表のコーチをしてみて、高校の前段階で指導すれば、もっといい選手が育つんじゃないかなと思ったということもあります。そういうところにかけてみようかなと。

――菊谷さんは、ジャパンで活躍し、キャプテンまで務めました。2015年W杯で南アフリカを破った「ブライトンの奇跡」の現場にいなかったにしても、後のジャパンの基盤を作ったのは間違いないと思います。そういう経験を伝えることについて、どうお考えでしょうか?

そういうのは、僕の仕事じゃないなと思っています。俊(廣瀬俊朗)とか、リーチ(マイケル)とか、五郎(五郎丸歩)が担ってくれればいいのかなと。僕が役割を担ったのは、ブライトンの前の段階です。そういう部分について、話すことは嫌いでもないですし、別に隠すわけでもないです。2019年にあれだけの成功(ベスト8)を収めましたが、成績が出なかった2011年も、その前の箕内(拓郎)さんがキャプテンだった2007年も、積み重ねなんだと思います。エディーさんは、アルゼンチンが12年かけて強化して2007年のW杯で大活躍した(3位)のを、「俺らは4年でやるんだ」って言っていたんですけど、4年じゃ無理なんだなと。やっぱり、強化って時間かかるんだなって、2019年の大会を見て思いました。そういうところで、やっと自分の2011年のW杯をちょっと誇りに思える気持ちになれたんですけど、それを積極的に語るつもりはないです。

――ご自身の仕事は、違うところにあると。

アカデミーの事業で、子どもたちに、いいアスリートになってもらう。そういうところでコーチングしたいし、影響を与えていきたいし、そういう場を増やしていきたい。そういうことがホントに僕の今の仕事かなと。最初は、5年ぐらいしたらトップリーグのどこかのチームにコーチとして戻れるかなとか、そういう状況もありましたが、もう切り替えました。いわゆるトップコーチ、トップリーグのトップコーチじゃなくて、このアカデミー事業のこの年代、ユースの下の世代、ジュニア世代、ジュニアキッズの世代の地盤を固めるのが、僕の目下の目標です。

――そうした若い世代の指導で、何を大事にしていますか?

どのカテゴリーでもそうですけど、選手が主体性を持つことが重要だと思っています。それをサポートしてあげるのがコーチの役目だと思うんです。今後もそこをしっかり継続していきたいし、そういう輪を広げていきたいですよね。いずれ、子どもたちが高校生になり、大学生になっていくところで、輪を大切にして、広げていきたいなと思っています。

――一番何を伝えたいですか?

僕のコーチングの方法は、アスリートの主体性を導き出すということですが、僕のコーチング哲学、フィロソフィーは“Fun”なんです。楽しさを作っていくことが大事なんですよね。しんどい練習でも、「やりがい」という楽しさがあったりとか、ボールを楽しく走り回っているだけで、気づいたら子どもたちが上手くなっているとか。それに“Questioning”を使って主体性を作ってあげる、そういったプロセスのコーチングです。人生においても、やっぱり楽しさが必要ですし、重要なところでFunの部分は大きいと思いますし、チャレンジも含めた楽しさだと思っています。そういう環境の中に自分を置けるかといった大きな意味のFunで、模索することで心の安定があるのかなと思っています。

――最高の準備をしても最高の結果が出ず、悩む人がいます。そうした時、どう自分に問いかけ、解決を図るのでしょうか?

最高の準備って、あくまでも主観じゃないですか。だから、最高の準備をしてダメだった時というのは、最高の準備ができていなかったということなんだと思います。ネガティブなレビューじゃないですけど、自分を疑うというか、まだできることがあったんだっていう。37歳まで現役でプレーしましたけど、僕、毎年ウエイトトレーニングの数値が伸びていましたし、努力は報われると思っています。頑張れば頑張るほど成長すると思っているんです。今まで、何かについて、それが完璧な準備だと思ったことがないです。だから、向き合い方としては、シンプルに「まだ出来ていなかった」というものです。常に、そういうマインドになっていると思います。落ち込んだ時もあると思いますけど、そういう時は大概、周りに友達がいるので、アルコールという「スキル」を使って、そんな状況も凄くポジティブにしていたような気がします(笑)。

End(お読みいただきありがとうございました。完 )


菊谷崇さんが代表を務める(株)Bring Up AthleticSocietyでは日本のジュニアスポーツにおける持続可能な環境を作るべく活動しております。他競技を含む色々な方々との繋がりを大切に活動していきますので今後とも宜しくお願いいたします。

 

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