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東北風土マラソン&フェスティバル 発起人会代表 竹川 隆司 :インタビュー後編「マラソンで東北と世界をつなぐ。駆け抜けた6年間」

2014年に初開催という近年のマラソンブームの中では、後発のイベントにも関わらず、年々参加者を増やしているマラソン大会があります。その名は「東北風土マラソン&フェスティバル」(以下、東北風土マラソン)。
このイベントを立ち上げた、竹川隆司さんは野村證券を経て、アメリカで起業するというまさにエリート街道を歩んできた人物でした。その竹川さんが、東北の震災後、今までのキャリアを捨て、なぜ縁もゆかりもない東北でマラソン大会を立ち上げたのか?
今回は、全2回にわたるインタビューの後半になります。

1977年神奈川県横須賀市生まれ。国際基督教大学卒業、ハーバードビジネススクールでMBA取得。野村證券にて国内・海外勤務等を経て、2011年にニューヨークでAsahi Net International, Inc.(朝日ネットの米国子会社)を設立。その後活動拠点を日本へ戻し、東北風土マラソン&フェスティバルを立ち上げる。現在zero to one代表取締役なども務める。

東北風土マラソンは“プラットフォーム”

――東北を応援したいという気持ちで開催してきた東北風土マラソンも、今年で6回目になりますが、振り返ってみていかがでしょうか?

「マラソンで東北と世界をつなぐ」というミッションを掲げてこれまでやってきましたが、その意味では年々少しずつ成長はできていると思います。また、ここまで続けられてよかったなと実感しています。
第一回目を始めるまでの苦労を考えると、5年を経て今では数千人規模の大会になり、食や日本酒との繋がりも深まっていること、とても嬉しく感じます。ここに至るまでに、数えきれないほどたくさんの方々のご支援、ご協力、そしてご参加があって、ようやく達成できたのだと思っています。感謝しかありません。

我々は基本的にランナー獲得のための広告宣伝費は1円も使っていないので、リピーターや口コミで参加してくれる本当のファンの方が多いんです。東北や東北風土マラソンが好きで、東北に足を運んでくれる人のネットワークができたというのも、すごくよかったと思っています。実際に今でも半数くらいは、宮城県外から参加してくれていて、それはすごくありがたいことだなと思いますね。
最終的な理想でいうと、自分自身や、一緒に作った創業メンバーがいなくなっても、メドックマラソンのように何十回とまわっていく、地元のイベントになってほしいと思っています。それには、まだまだ年月も努力も必要かなと思いますけどね。

――東北風土マラソンが自走していくために、竹川さんが必要だと考えていることはどんなことですか?

単純な話でいうと「いかに自分ゴトとして捉えてくれる人の数を増やすか」ということだけだと思っています。
東北風土マラソンは、もともと我々創業メンバーがアイディアを発信し、地元の方々と一緒になって実現したところから始まっていますが、そもそも「東北風土マラソン」の場自体が “プラットフォーム”だと思っているんです。だからこそ、このプラットフォームに「どういうものを乗せていきたい」とか、「どういうことを変えていきたい」とか、思いつく人がどんどん主体的にやってほしいと思っています。

私たちが人を集めるから、そこで何をやりたいかを自分たちで考えてくれていいし、それが実現できるフローもできたので、多少リスクをとってでも新しいことをやってもいいと思うんですよね。
そういう意味では、最初の5年間は立ち上げと成長の期間だったので、今回の大会も含めたこれからの5年間で、大会の質を向上させつつ運営を安定させて、より地域の人が主体的に取り組める形にしていけたらいいなと考えています。

東北風土マラソンから、東北を想う世界観を作る

――東北風土マラソンを地元化させるために、現在取り組んでいることはありますか?

将来にわたって「自分ゴトとして捉えてくれる人」を増やすために、地元のボランティアを増やしつつ、運営側として準備段階から関わってくれる方の人数も増やしていく必要があると思っています。これまでの5年間で、地元では各企業・団体のご協力、さらにはコース周辺の区長さんたちのご協力もあり、今では大会ボランティアの8割を地元の方々に支えていただいています。

また、将来の運営メンバー育成にも動き出しています。東北風土マラソンをはじめとして、地域振興やチャリティーを主な目的として大会運営を行なっているリーダーたちが主体となって、昨年より「スポーツx地域 リーダーシッププログラム」なる新しいプログラムを開催しています。これは座学で大会企画や運営のノウハウ、運営者の成功談失敗談を学びつつ、実際に大会の運営メンバーとして企画や当日のボランティアリーダーとしての活動を行い、大会を推進するリーダーシップを体感してもらうプログラムです。前回の東北風土マラソンでは、その面々にも活躍してもらっていたのですが、東京のみだったそのプログラムを、今年は仙台でも同時開催していく予定です。

――東北風土マラソンが、例えば地元のイベントとして竹川さんがいなくても自走していくようになったときに、次に実現したいことはありますか?

私自身は毎年ランナーとしても東北風土マラソンを走っていますが、これからも走り続けたいです(笑)。
そして、東北風土マラソンを通して、これからもたくさんの人と東北をつなげていきたいと思っています。東北風土マラソンをきっかけに東北に来てくれて、東北の食でも、日本酒でも、東北の何かしらの要素を好きになってくれて、年に1回は東北風土マラソンの機会に東北に戻る。でも、そうじゃないときも、東京で東北のお米があれば買うし、油麩があれば買うし、日本酒があれば東北の銘柄を手に取るみたいな、そういう世界観を実現したいのです。

メドックマラソンが、長い年月をかけてメドックワインをグローバルブランドにしてきたという実績を見るにつけ、それは、決して不可能なことではないと思うんですよね。だから、最終的には、東北の食なり、日本酒なりが1つでも2つでも多く、東北風土マラソンを通して世界のブランドになっていくというのを、東北のお酒を飲みながら見守っているというのが理想です(笑)。

笑顔の総数を増やす、チャレンジングな選択

――竹川さんの行動指針や、物事を決めるときに大切にしていることは、どんなことですか?

自分にしかできないこと、自分が一番貢献できること、という視点を常に意識しています。
自分が何かを決めるときは、自分にとって最もチャレンジングな選択をするようにしています。つまり最も大変で誰もやらないので、自分しかできないかもしれない、そんな選択をしていきたいなと。しかし、チャレンジングであればなんでもいいわけではなくて、それを行うことで、できるなら笑顔の総数が増えるということも大切にしています。自分を活かせるフィールドの中で、笑顔指数を最大化させることができる環境に、自分は身を置きたがるんだろうなと思っています。

そして、その環境がいくつかもあるのであれば、無理してでもすべてやろうと思ってしまうかなと思います。名刺や肩書が増えてきたときに、何かに絞らなきゃいけないのかと思った時期もありましたが、ひとつに絞ってしまうよりも、キャパとして可能ならすべてやっていいのではないかと思うようにもなりました。
想いがある人たちから始まった輪は、たくさんの人たちにつながっていきます。おそらく、自分が大手企業だけにいたり、ベンチャー企業だけを続けていたりしたら、会えなかった人たちがたくさんいて、そういう人たちとの出会いが、仕事を抜きにしても、人生を豊かにしてくれています、そのほうが自分の人生として楽しいなと、そんな風に思っています。

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