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GK育成スペシャリスト / エルナン・エラリオの実戦!ゴールキーパークリニックvol.1『現代GKに課せられる役割』

GKというポジションの役割は、年々増え続けています。

マンチェスターCのエデルソン、FCバルセロナのシュテーゲンを始めとした世界のトップレベルで活躍するGKは、もはやゴールだけを守る存在ではありません。

正確なロングフィードやパントキックから一気にチャンスを演出したり、ボールポゼッションにも参加したりと、攻撃の面でもチームに欠かせない存在となっています。

しかし現代サッカーにおいて、なくてはならないGKというポジションの価値、をどこまで正しく評価できているでしょう?そう話すのは、アルゼンチンのトップクラブにて、20年以上もGK育成に携わる、エルナン・エラリオ氏。

代表選手を始めとする、数多くのプロ選手を育てる、GK育成のスペシャリストにお話しを伺ってきました。

GKというポジションの価値や役割、トレーニング法、メンタルの保ち方、コーチがGKとどのように関わるべきかなど、GKにまつわる内容を、月に一度程度(不定期)でお届けいたします。

▼エルナン氏のコーチング風景▼

生年月日:1978年7月9日(44歳)
出身地:アルゼンチン

指導経歴(アルゼンチン1部リーグ):2005 ウラカン/2006-2010 べレス・サルフィエルド/2011-2013 ティグレ/2014-2018 CAバンフィエルド/2019-2021 ヒムナシア・デ・ラ・プラタ/インターナショナル・オブ・ゴールキーパー ディレクター

–現代サッカーにおけるGKの役割をどう考えていますか?

現代GKは、守備では最後の砦となり、攻撃のスタート地点となるため、サッカーにおいて最も重要なポジションです。

今やGKというポジションは、単なる”ゴールだけを守る存在”から”ゴール前でプレーする1人のプレーヤー”に変貌を遂げました。サッカーが生まれた時のGKは、ゴールを守るためだけのポジションでした。

しかし時が経つにつれ、GKも足を使ってプレーする必要が出てきました。ただゴールを守るだけでなく、攻撃においても求められることが多くなり、年々GKに対する責任は大きくなっています。

1990年代では、味方ディフェンダーがバックパスした時、GKは手でキャッチすることが可能でした。その後、FIFAのルールが変わり、バックパスを手でキャッチすることができなくなりました。

以前はいつでも手でボールをキャッチできていたのに、いきなり足を使ってプレーに参加しなければならなくなったのです。このルール変更は、GKの歴史において大きな変化となりました。

今や、多くのGKが足を使ってプレーすることができます。しかし、足元の技術向上については、多くのGKにとって、最も改善が難しいテーマです。GKの役割は、今後も増えていくことでしょう。

–優れたGKがいるチームと、いないチームでは、何が大きく変わるのでしょうか?

世界のサッカー史上、素晴らしいGKのいない強豪チームを見ることはできません。

サッカーの歴史上、最高のチームには、常に優れたGKがいました。世界チャンピオンになったブラジル、世界チャンピオンになったイタリアには、素晴らしいGKがゴールマウスを守っていましたよね。

もし、素晴らしいGKがチームにいなかったら、重要な大会で優勝することは不可能です。なので、多くのチームは後ろから前に向かって選手の配置を決めていくんです。

GKというポジションについて、より適正に評価をしていく必要があると思います。

–現代のGKには、どのような能力が必要なのでしょう?

まず、GKにとって1番重要なスキルは”正しいポジションにつく”ことです。

状況に応じて自分がどこにいれば良いかを知っていることは大きな武器になります。GKが常に正しいポジショニングができていれば、わざわざ飛び込んでゴールを守る必要はありませんよね。

ゴールを決められないために、GKが選択しなければならない最後の手段が、飛び込んでボールを弾き出すことなのです。

正しいポジションについていなければ、空いているサイドにボールが飛んできてしまいます。そうなったら、飛んでボールに反応し、コーナーまたはサイドに弾く以外の選択肢は残りません。そうならないために、まずボールの位置を把握することが重要です。

ボールの位置を把握できれば、いかに最短の時間で正しいポジションにつくのかをイメージできます。そのためGKは、まず正しいポジショニングを覚える必要があるのです。

次に、どんな時にでも手を確実に動かせるよう、集中しておくことが重要です。最近のGKは、こぼれ球を与えやすい傾向にあります。こぼれ球に対するトレーニングは必須だと思いますね。

また、昔に比べてどんどんボールが軽くなってきています。これは別のテーマですが、40年前のボールと現代のボールは同じではありません。

ボールがどんどん軽くなっていくのは、ゴール数が増え、よりエキサイティングなスポーツに映るようFIFAが改善しているからです。

GKがPKをセーブするよりも、選手がゴールを決める方が、観客にとっては魅力的ですよね。そういった背景から、ゴールを簡単に許さないGKの存在価値は、クラブレベルで高まっているのです。


今回取材に答えてくれたエルナン氏。月に一度(不定期)GKの心得やテクニックについて協力をしてくれる

–正しいポジショニングは、どのように学ぶことができますか?

トレーニングが大切なのはもちろんですが、たくさんの試合を観て、プロ選手や他の選手のプレーから学ぶことも重要です。

プロの選手たちを観察ことで、どのようなミスが起きやすいのか、プロ選手はどのようにポジションを取っているのか、活躍できる選手がどのような資質を持っているか、を学ぶことができます。

少し話しがそれますが、アルゼンチンでは、1部リーグやユースリーグの試合で、子供たちがボールボーイとして試合に参加しています。若い彼らにとって、それが重要な機会となっているんですよ。

実際にピッチ上で選手のサポートをすると、選手や監督、サポーターのサッカーに対する情熱を間近で感じることができます。

特に南米の人々は、サッカーに対してかなりの情熱を注いでいます。その情熱や愛、緊張感を肌で感じることは、プレイヤーとして大いに役立つでしょう。

それもまた、学びの一部なのです。ピッチ上、またはゴール裏から、情熱やプレッシャーを感じてください。

サッカーを学ぶということは、必ずしもプレーの仕方だけを学ぶことではありません。サッカーを取り巻くすべてのことから、学ぶことが大切です。

–ゴールキーパーは必ず失点に絡んでしまいますよね。1つのミスも許されません。GKとしてプレーするために、メンタルを保つ方法を教えてください。

GKというポジションは、常にミスがつきまとうポジションです。ピッチ上の中で最も難しいポジションであり、大きな責任を負います。

なのでまず、試合日までに自信をつけることが大切です。もちろん技術は大切ですが、GKにとって、感情や心理的な側面で良い状態を作ることが何より重要です。GKというポジションには、常にミスがつきまとうもの。

心理的に良い状態でプレーできなかった場合、さらなるミスを犯してしまいます。試合当日までに、次の試合のプランを決める、チーム内でGKの競争に勝つ、相手チームのプレービデオを見る、などをして自信高めましょう。

私が指導する際は、選手たちに可能な限り多くのツールと自信を与え、彼らが最高レベルのGKであるという心理的なアドバンテージを持てるようにサポートしています。

ホセ・ルイス・チラベルト(元パラグアイ代表・世界最優秀ゴールキーパー2回選出、南米最優秀選手賞1回受賞)は、「最高のGKになるためには、1000以上のゴールを決められる必要がある」と言いました。失点はただのミスです。ミスは誰にでも起こり得ます。

大切なことは“ミスから学ぶ”ということです。世の中に、生まれつき何でもできる人はいませんよね。今私のインタビューを読んでいるいアナタも、プロサッカー選手も、もちろんコーチである私も、全ての人が毎日学んでいるのです。

ミスをした時こそ感情的にならず、何が原因なのか、どこでミスをしてしまったのか、を分析し改善していく姿勢が必要です。

To Be Continued……月に一度(不定期)掲載を予定しています

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