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7人制ラグビー日本代表 坂井克行:インタビューvol.2「世界の 7 人制ラグビー:海外事情・プレースタイル・"外国人"選手」

2020 年東京オリンピック正式競技の 1 つ、「7 人制ラグビー」。日本代表として最多出場記 録を持つ、「ミスターセブンズ」坂井克行選手が、この競技について語る本連載。第 2 回目の今回は、世界における普及、プレースタイル、「外国人」選手など、世界の 7 人制ラグビ ー事情について、坂井選手にご説明頂きました。

1988年9月7日生まれ 三重県出身 身長172cm/体重85kg
三重県立四日市農芸高校でラグビーを始め、早稲田大学に進学、現在は豊田自動織機シャトルズに所属。2010年、大学4年時に召集されて以来、10年以上に渡り7人制ラグビー日本代表で活躍する「ミスターセブンズ」。ピンポイントで蹴り上げるキックオフのドロップキックなどを武器に、2016年リオ五輪では日本代表の4位入賞に貢献した。7人制日本代表での出場試合数は歴代最多。

――日本では、あまり 7 人制を見る機会がありません。海外の状況を教えて下さい。

15 人制と 7 人制の両方が強い、結果を出している国は、それぞれを全くの別物として捉え ています。セブンズの代表選手が、それぞれの国の協会とプロ契約をしていますが、15 人 制のプレーはしません。二足の草鞋は履かず、セブンズ一本に絞る、これが世界では当たり前になっています。聞いた話なので確証はありませんが、セブンズ強国のフィジーの場合、7 人制の代表になれなかった選手が 15 人制の代表を目指すそうです。それぐらい、フィジーではセブンズの人気が高いんです。2016 年のリオ五輪でフィジーが金メダルを獲得したとき、空港からバスで普段は 1 時間の道が、通過するのに 5 時間かかったそうです。 そのぐらい国民がセブンズを愛しています。15 人制の世界ランキングでは、そこまで高い位置にはいません。セブンズが盛んな国なのです。

――他、15 人制よりも 7 人制が普及している国は、ありますか?

あまり 15 人制では聞いたこともないような国の 1 つに、ケニアがあります。ちょっと失礼 かもしれませんが、個人的には、ケニアが 15 人制でプレーしているところを見たことがありません。ですが、セブンズでオリンピックに出場しています。しかも、世界のトライランキング 2 位に入るような、レジェンド級の選手もいます。ケニア特有の、「デカくて速くて強い」という身体能力の高さがあり、セブンズなら世界の上位に食い込むチャンスを持 っています。アメリカもセブンズが強い国の 1 つです。

――アジアにも、そういった国はあるのでしょうか?

スリランカがそうですね。15 人制では、ジャパンがスリランカと試合をしたら、100 点差がつくと思いますが、セブンズのスリランカは足が速くて強く、なめていたら足元を掬わ れる、そういうマインドで僕らは戦いっています。ここ 5、6 年で強化が進んでいますね。 国内の大会も盛んで、世界の有名選手が、スリランカの大会に出場することもあると聞い ています。

――強さや速さなど、身体特性のお話が出ました。各国の戦い方の特色についても教えて下さい。

少し専門的になりますが、ラック(※選手がタックルを受けた後など、地上にあるボールの争奪でできる密集)ベースでどうするかということがあります。大きく分けると、「ランニングベース」で攻撃するチームと、「パスベース」で攻撃するチーム、2 つのタイプがあります。ランニングベースのチームは、ボールを持って走ってディフェンスを動かし、そこで生まれたスペースに、また次の選手が走りこむラグビーです。もう 1 つのパスベースのチームは、パスを振って振って相手を動かし、それでできたスペースに、またパスで振 ってトライを取りに行くラグビーです。フィジーは、どちらかというと、パスベースです。 高い身体能力を活かし、1 人の選手にディフェンス 2 人が寄ってきたところを、大きなワンハンドパスを通し、大きなフィジアンステップで仕留めるラグビーです。南アフリカやアメリカは、どちらかというと、ランニングベースです。アメリカは、アメフトや陸上出身 の、100m10 秒台の選手が走り込み、更に重ねて走り切るラグビーをします。ジャパンは、この 2 つのスタイル間を取っています。

――セブンズに限らず、15 人制でも日本代表には「外国人選手」が多く含まれています。

ラグビーの場合、一定の要件を満たせば、国籍を持たない国の代表になることができます。 そのため、日本代表にも、海外出身の選手が多く存在します。当然、自分の出身国の代表を選ぶか日本を選ぶか、その選択を迫られますが、彼らは日本代表を選んでくれました。 そのことに関し、非常に感謝しています。7 人制でオリンピックに出場するには、その国のパスポートを取得する必要があります。つまり、彼らは、国籍を変えてまで日本代表を選択してくれたのです。その意味で、彼らのことは、「助っ人」ではなく、本当に「仲間」だ と思っています。

――どんな経緯で日本代表となった選手が多いのでしょう?

大学に留学生としてやって来て、そのまま日本に残り、日本代表を選んでくれた選手が多いです。彼らは、大学の 4 年間で、寮生活を経験しています。日本語がペラペラの選手もいますし、敬語が使える選手もいます。そういう意味では、日本の心を持った外国人です。 一緒に食事を取っている中で、家族の話、なぜ日本に来たのかといった話や、将来日本にいたいのかという話もします。ずっと日本にいたいという選手も、結構多いです。助っ人 ではなく、日本を代表し、日の丸を背負って戦っている選手と捉えて、彼らのプレーを見て欲しいです。

――7 人制代表の年間スケジュールについても、ご説明下さい。

15 人制のシーズンは、ほぼ決まっています。6 月と 11 月が代表の活動期間となり、4 年に 1 回 W 杯があります。それに応じて、日本では 9 月から 1 月までが通常のシーズンとなります。ですが、セブンズの場合、ほぼオールシーズンで活動しています。1 番有名なワールドラグビーセブンズシリーズは、12 月から 6 月まで行われます。その間、9 月から 11 月に かけて、アジアのシリーズも開催されます。つまり、ほぼ 1 年を通して、世界中で大会が行われているんです。

――7 人制をやっていたからこそ行けた国もありそうですね。

嬉しいことに、南極以外の 5 大陸は制覇させて頂きました(笑)。普段いけない国や、ラグビーをやっていなかったら旅行で行くことのない国に行けたことは、セブンズの特権かなと思います。まさか、こんなに海外に行くとは思っていませんでした。閉所恐怖症気味で、飛行機がちょっと苦手なんですけどね(笑)。

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