ラグビー特有の複雑な代表選考
――日本で育ち、これだけ日本語が堪能で、日本で家庭もお持ちです。そうしたバックグラウンドのない、他の外国人選手が日本代表に入ることを、どういう風に思われますか?
どうだろう?うーん……。多分、僕の恩返しレベルまでは至らないとは思うんですけれど、でも、チャンスを与えてくれたということに対して、彼らなりの恩返しの気持ちが強いのではないかなと思います。
――出身国の代表に呼ばれ、それを理由に日本代表を断る選手がいると仮定します。そういう外国人選手に対して、率直にどう思います?
うーん……どうだろう、気持ち分からなくはないです。
――2つの国で代表になる資格を持っている選手については?
日本でプレーするのであれば、当然日本代表を狙うべきだと僕は思います。だけど、母国の代表を目指すと言うのであれば、それはその選手の判断です。僕も気持ちは分かるというか。ただ、他国の代表歴があることでグラウンドに立てないとか、当然それだけで契約の話も変わってきます。例えば、外国人枠が限られていると、元NZ代表や豪州代表など、当然そういう選手をチームは使います。だから、お勧めはしません。
――外国人留学生の場合、大学卒業後を考えた時、就職など、7人制代表になるメリットは大きいように思います。
来たチャンスに対して、それをしっかりモノにするのは、多分どのアスリートにとっても当たり前のことです。デメリットはないです。本当にどうしても母国の代表に入りたいという場合、それに対してはデメリットですが、僕の中ではもう99%メリットしかないです。
――オリンピック出場にはパスポート所持が絶対条件となりますが、15人制の場合、一定条件を満たせば、国籍を持たずとも代表になることができます。このルールについて、どう思いますか?
凄く特有なラグビーの文化ですね。まあ、パスポートを持ってからの方が、もうちょっとジャパンとしての自覚を持てるのではないのかなという風に思います。
――では、パスポートがないと出場資格を得られないオリンピックに関しては?
それはそれで、まあ当たり前ですかね。当然、パスポートを持った方がいいと思います。オリンピックとは別の大会も、同じルールでなければいけないのではないかなと思います。パスポートを持たずに出ている選手もいて、多分彼らのためにもなっているし、チームのためにもなっていると思います。けれど、僕が決定を下すとしたら、パスポートは絶対ですね。そうでなければ、ジャージーの重み、ジャージーに対しての責任というのが、多分薄れてしまうと思います。結構、日本独特の文化というのもあると思うので、やっぱりその面でも、しっかりと日本の文化も入れなければいけないんだなと思います。
――現在、ワールドラグビーの規約が厳格化される方向です。これまでは、3年間の継続居住で代表資格を得ることができましたが、その期間を延ばすなどの処置です。ご自身も、トップリーグのルールに振り回されたご経験をお持ちです。その厳格化していく出場資格について、どう思いますか?
まあ反対ではない、でも、賛成とは言えないです(笑)。でも、居住年数をもっと長くするということより、パスポートを取得した方がいいんじゃないかと思います。しっかりと日本語も話せるとか、条件を変えて、もう少し現実的な対応をするというか。
日の丸を背負う覚悟
――普段はラグビー観戦をしない、でもオリンピックなったらテレビをつけるであろう人達に対し、外国人選手のどんなところを見て欲しいと思いますか?
数少ないジャージー、しかも日の丸のジャージーを僕のような外国人に与えられることは、凄く誇りに思うと思います。当然体を張って、死んでもいいくらい体を張ってプレーしていきます。そこは、見た目関係なく、しっかりと応援してもらいたいと思っています。
――日本で育ち、日本語が堪能で、日本文化にも理解があるトロケさんです。この7人制日本代表というチームの中で、ご自身の存在、役割というは、どのようなものだと思っていますか?
どれだけチームにとってメリットになるか、いい存在になれるかというところですね。ミーティングやグランドでも通訳をするんですけど、いや楽しいです(笑)。引退後も日本に住むつもりですし。通訳するというツールも役に立ちますし、通訳しつつ、自分の勉強にもなっているので、だからプラスです。周りにもプラス、自分にもプラス、そう思っています。プレーの部分では、しっかりと自分の強みを活かして、自分が犠牲になって、他の人のトライにつながれば。ボールキャリーは強みなので、そこでしっかりとチームに貢献できればと思います。
――引退後のプランは?
正直まだはっきりと決めていないんです。でも、もう帰らないです。日本で生活します。NZやトンガに帰っても、ゼロから始まっちゃうんで(笑)。