つながりたいのは前傾姿勢の人
萩原:「ゆるスポーツ」を通して、一緒に仕事をしたいというオファーはたくさんあると思いますが、その中で、澤田さんがこの人だったら一緒に仕事をしたいと思える人はどんな人ですか?
澤田:「なぜ僕らなのですか?」という問いに対して、明確かつユニークな熱のこもった答えが返ってくる人ですね。特に熱がこもっているのがポイント。スポーツの試合でプレーしているときと同じように、前傾姿勢になっている人はいいですよね。なので、お金はあるけどやる意義や大義、先方の熱意がない案件は基本的に受けていないです。そういう案件はやっても自分の人生に得がないなって思うんですよ。萩原さんはどうですか?
萩原:僕も自主性がある人がいいです。基本は自分がどうにかするから、その時に知恵や手を貸してほしいというスタンスできてくれる人と、仕事をしたいと思っています。自主性もないのに「無償でなんとかしてください、協力してください」って依頼する人の仕事も受けないです。ボランティアじゃなくて、プロとして取り組んでいるわけですし。お金がなくてもやれる方法はあるんだから、考えることを放棄しないで、もう少し自分たちでやってみたらいいのにと思います。
澤田:それは、困ったらなんでも誰かが与えてくれるという、世の中の公助の仕組みが働きすぎているからだと思うんです。だからこそ今の時代は自主的にやる自助と、周りと協力する共助を大事にしたほうがいいと思うんです。「無償でやってください」というのは公助であって、僕らは公助できるほど立場が上でもないし、立派なものではないんです。だから、みなさんには僕らに頼る前に周りの人たちとコミュニティを作って、自分たちでスポーツを作ってみたり、やってみたりしてほしいと思っています。
一緒に仕事する人に求めるのは、フィールドでの全力プレー
澤田:何かに取り組むときに、フィールドに立っているプレーヤーでいるか、観客席に座っているオーディエンスでいるかは全然違うんです。僕は全員がフィールドに降りてプレーヤーでいる社会を作りたいと思っているんです。プレーヤーでいる状態っていうのは楽しいし、すごく頑張れると思うんです。だから目指すのは「観客席よ、立て!」みたいな脱オーディエンス社会。僕らは弱小団体で偉そうに語る立場にないから、あくまで僕らと仕事するなら、こういうスタンスがいいというだけですけどね。
萩原:僕らはチームプレーを楽しんでいますもんね。一緒に働く人はチームメイトだから、自分がそのチームにいて全力でプレーしたいと思えるか、という観点は大きいですよね。やっぱりチームメイトが本気だから面白いと思うんです。
澤田:スポーツでは試合中にプレーできる人数が限られています。「ゆるスポーツ」もそれと同じだと思っていて、大勢でやるものでもないから、参加する人にはレギュラーを狙う気分で入ってきてほしいと思っているんです。自分の代わりが他にいる状況はつまらないですよね。でもそれを生活上で体験するのは難しいから、まずは自分起点で「ゆるスポーツ」を作ってみてほしいんです。そうすると自分起点の社会や世界像が見えて、その世界では自分がレギュラーですからね。
萩原:自分を軸にオリジナル「ゆるスポーツ」を作ることで、自分ってなんなのか、何を楽しいと思って、何を好きだと感じるのか、自己理解ができますもんね。自分が創始者になったつもりで王国や星をつくるように、自分が中心の世界や社会を作っていくことが「ゆるスポーツ」の醍醐味ですね。
本気モードになるスイッチのひとつが「ゆるスポーツ」になればいい
萩原:そういう自分が主人公になる世界を、みんなが考えられたらもっと楽しい社会になると思うんですが、それができない人は多いように感じます。そのことについて、澤田さんはどう思いますか?
澤田:みんなもっと自分を信じたほうがいいし、自分を好きになったほうがいいと思います。それは自己を甘やかすのではなくて、いろんな側面をもった分厚い人格層としての自分をもっとフェアに見てあげて、認めてあげてほしいんです。
萩原:自分のことを個性がない、たいしたことないと言っている人でも、例えば映像だったら、たった数分で大きなデータ量になるわけです。人間はずっと映像が入ってくるわけだから、生きてきた年数×365日×24時間を計算していくとおびただしい情報量になるわけです。そんなに情報の詰まったデータ、つまり人に価値がないわけがないんです。
澤田:最近僕は「人生のマイベスト喜怒哀楽」を人に聞いて、それがその人の厚みでありその人らしさであることを証明するという取り組みをしています。人の喜怒哀楽の4つの組み合わせが掛け算でかぶることはないから、その時点でその人の本質なんです。そしてそのすごく楽しかったことやうれしかったことは、今の生活やビジネスに生かせていて、誰かにその体験を提供しているか。哀しかった体験を少しでも減らす社会にするために、仕事をやっているか。ほとんどの人がこの問いに「やってない」と答えるわけです。それをやってみてほしいんです。
萩原:誰もがマイベスト喜怒哀楽という編集方針のもと、自分が得てきた膨大な情報量から自分なりの生き方を作っていく編集者なのかもしれないですね。それぞれのパーソナリティーや経験を編集して、自己実現する社会を作っていくことが大切ですね。
澤田:その作業はなかなかやらないから、それを「ゆるスポーツ」を使ってやってほしいです。僕は、それぞれ自分の実感できる社会を作ってみんなが本気モードになったら、世の中が変わると思っているんです。その本気モードのスイッチのひとつが「ゆるスポーツ」になればいいと思っています。