――チョロ(シメオネの愛称)、最初にあなたが嫌いな質問から聞きますよ。98年のフランスW杯でのアルゼンチン代表のことを聞かせてください。どんな思い出がありますか?
試合のこと?
――そうです、W杯の。
そうだな。グループ内の雰囲気はよかった。
おそらくグループの外に対して多くの問題があったんだと思う。 僕たちはすごく批判を受けていたけど、チームは自信を感じていた。
自分としては今まででのW杯で一番世界一に近いところにいると感じていた。少なくとも、当面の目標だったベスト4には行けるだろうとね。
――94年のW杯から98年のW杯までに何が変わったと思いますか?
当然、大幅な入れ替えがあったよ。だから、最初は苦労したさ。ダニエル(パサレラ監督)の就任当初は簡単なものじゃなかった。
だが、エクアドルとの南米予選からチームとしてのまとまりが断然よくなった。選手たちが自分の役割を理解し始めた。それからチームとして機能し始めたんだ。
チームにはベロンやクレスポ、アリエル(オルテガ)、ピヨホ(クラウディオ・ロペス)、アジャラ、ザネッティら若い選手がたくさんいた。彼らはそれぞれのクラブでもいい感じでプレーできていた。
繰り返すけど、その頃の代表には若い選手たちが大勢いて、ちょうどいい年齢構成だったんだ。当時の代表は最年少が24歳で一番ベテランでも28歳とか30歳という感じだった。ものごとがうまく進むために理想的な年齢構成だった。実際、彼らはすごくよくやってくれたよ。最も重要だったW杯で最後まで勝ち残れなかったことを除いてはね。
――ベスト16の組み合わせでイングランドと対戦した時はなにか特別な感情はありましたか?
いや、ぜんぜん。むしろ歓迎だったね。ノックアウトステージの組み合わせを見た時、決勝までどう勝ち上がるかを想定すると、かなり強烈な組み合わせだった。
次はオランダとの対戦になり、その後はおそらくブラジルとあたり、決勝はフランスだろうという風にね。だから、まずイングランドを下して次に進むことを想像するのは最高だった。もちろん、試合の結果が異なるということだって十分ありえたけどね。
アルゼンチンは前回の大会でも勝利できなかったというプレッシャーもあったし。
前半、イングランドは序盤に攻勢をかけてきたが、僕らが最後に追いつくというタフな試合展開になった。後半に入りすぐに僕らは1人多い状況になった。(前半47分にベッカムが退場)
数的優位を生かすことができなかったが、勝てるチャンスは何度か作っていた。
最後は幸いにもPKで勝利でき、国民に喜びを与えられたのは素晴らしい出来事だった。
残念ながら、次の試合でもうひとつの偉大なライバル・オランダに素晴らしい試合の末に敗れてしまったわけだが。
―― (イングランド戦では)シーマンのファールでバティストゥータがPKを決めて先制しましたね。その後、マイケル・オーウェンのゴラッソでイングランドが同点に追いついた
いや、記憶が確かなら、たしか0-1で先制されたんじゃなかった?よく覚えてないけど。
―― 1-1はマイケル・オーウェンがピッチの真ん中辺りでボールを受けて・・・
いや、僕らがPKを決めて1-0にして彼らがPKを決めて1-1だったはず。
(※正しくは6分にバティストゥータのPKでアルゼンチンが1-0で先制。その後、10分にアラン・シアラーのPKで1-1となる。オーウェンのゴールはその後の16分でイングランドが2-1とで逆転)
まだ若手だったが、あのオーウェンのカウンターは素晴らしかったし、最後に信じられないようなゴールを決められた。
その後、フリーキックからの素晴らしいボールで僕らも追いついた。
―― その前に、マイケル・オーウェンのゴールを見て、アルゼンチン代表はどう反応したんですか?ああいうゴールを決められて厳しい立場になりながら素晴らしいフリーキックで追いついたわけですが、オーウェンのゴールをどう見ましたか?
1-2でリードされた瞬間はイングランドの出来は僕たちよりよかった。試合の一部として見るなら、たぶんあのW杯で最も素晴らしい前半戦のひとつだったと思う。
あの直後は前のめりになってしまい、ゲームに入り込むのに苦労した。
よく話すことだが、前半終了間際にフリーキックから得点できたことで選手たちは落ち着きを取り戻すことができた。あのゴールが決まったことで何人かの選手は落ち着きを取り戻し、再び試合に入り込むことができたんだ。
―― ベッカムの退場の時、あなたが倒れたのは本当に蹴られたからなんですか?
いや。ベッカムは若かったけど、重要な選手だと認識していた。
試合中に選手のリアクションを利用することはサッカーの試合ではよくあることで、
本当のことを言えば、僕は彼のリアクションを狙っていた。
彼が倒れてから僕はわざと少し待ってからゆっくりと立ち上がった。そしたら彼が反応してきた。
(※倒れたままのベッカムがシメオネに向けて足を出し、後ろに下がってきたシメオネがその足に引っ掛けられて転んだため、主審はベッカムにレッドカードを提示した)
おかげで後半、僕らは1人多い数的優位となった。
そういう状況は試合ではよくあることで、一方が利口でもう一方が間抜けということではない。
単なる状況にすぎず、結果的に片方が有利になった。
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To Be Continued…(vol.2は12/13(日)投稿予定)