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メキシコU24代表コーチ・西村亮太インタビューvol.2『若手の台頭にみる、メキシコの育成環境』

2021年3月30日、東京オリンピック出場を賭けた北中米カリブ海予選であるコンカカフ・プレオリンピック選手権決勝が行われた。決勝の舞台を戦ったのは、U24メキシコ代表とU24ホンジュラス代表。結果は1対1、PK戦の末、メキシコがホンジュラスを下して優勝した。そんなメキシコU24代表でコーチを務める日本人がいる。彼の名前は、西村亮太。東京オリンピックに北中米カリブ海王者として挑み、自身の出身国である日本と同組で戦うことになった。今回のインタビューでは、メキシコサッカーの強さの秘訣や、メキシコサッカーの育成環境、日本サッカーを外から見て感じること、などについて伺った。

今回は、全3回にわたるインタビューの2回目になります。

大阪府の大塚高校時代に、プロ指導者への道を考え天理大学に進学。天理大学卒業後の2008年には筑波大学大学院に進学した。筑波大学大学院では、サッカー研究室に所属しながら、筑波大学蹴球部で2年間コーチングの実践を行った。2010年には、プロの指導者を目指しメキシコへと渡った。現在U24メキシコ代表のコーチングスタッフの一員として、2021年の行われる東京オリンピックに出場する。

 

 

vol.1はこちらから

-メキシコの選手育成についてお話しを伺いたいと思います。メキシコ国内には沢山のクラブがあり、クラブによって哲学などもバラバラだと思いますが、メキシコという国レベルでの育成では、何に重きを置いているのでしょうか?

2019年にメキシコ代表のトップが変わりました。それに伴い、新しい育成メソッド部門も設立されました。
その新しい部門が目指しているのは、攻撃的なサッカーを攻守ともに展開する、というスタイルです。

守備では、前からアグレッシブにプレスをかけてボールを奪う。攻撃では、ボールを繋いで攻めるものの、優先順位はゴールです。
チャンスと見たらどんどん前に出て、ゴールに仕掛けていこう、というアイディアを掲げています。

ボールを大事にしながらも常に前に攻める……
クラブと代表が連携を取り、これらができる選手のピックアップが始まりましたね。

-メキシコサッカーの育成環境はどの程度整備されていますか?

メキシコ1部リーグに所属しているクラブの育成環境は、整備されたピッチにクラブハウス、寮や食堂がついていてものすごく良い環境です。
しかし、プロになって活躍するほとんどの選手が、でこぼこのグランドや、土のグランドなどと、整備されていない環境で育ちつつ、13、15歳くらいで、1部のクラブにスカウトされています。

メキシコリーグは大きく分けて、二つのクラブがあります。

一つは、1部リーグに所属する環境がかなり整備された中で行われるリーグに所属するクラブ。
もう一つは、スペイン語でキンタディビシオン(5部)、クアルタディビシオン(4部)とか、テルセイラディビシオン(3部)という環境が整備されていない下部リーグのクラブです。

その下部リーグでは、グランドレベル、審判のレベルも全く整備されていません。
劣悪な環境下で揉まれながらプレーしている選手、まだ15歳だけど19歳の選手に混じってプレーしている選手などが多くいます。

-たとえ劣悪な環境でプレーしていたとしても、十分にチャンスがあるんですね。

チャンスが平等にあるというよりは、プレーする場が沢山あるようなイメージです。
プレーする場所が沢山あるので、自分のプレーを見てもらえる機会が増えます。

例え、自分が1部リーグのU15でプレー出来ていないとしても、下部リーグで活躍をしていればチャンスは大いにあります。
下部リーグには、そのチャンスをうかがっている選手が何人もいるのです。

年上の選手との激しい競争の中で磨きがかけられます。
そして、16歳や17歳になると1部のクラブにスカウト、育成の仕上げをしてからプロデビューする例が最近は増えてきました。

-南米や中南米では、スカウトが草サッカーを見ていて、いい選手を見つけるとクラブに連れて行く、という話しを聞いたことがあります。メキシコでもそのようなことは実際にあるでしょうか?

そこまで劇的なサクセスストーリーはあまり聞きません。
ですが、メキシコリーグ1部のクラブのほとんどが、国内全土にスカウト網を持っており、定期的に集団セレクションを開催しています。

セレクションは、目の行き届かないような小さい町などでも開催します。
埋もれかけていたタレントを発掘するためです。

-南米や中南米では、早い段階でデビューして活躍している若手選手が多い印象があります。日本だと大学を卒業し、22歳でやっとプロデビュー、という場合が多いです。若い選手を躊躇なくデビューさせられる環境は、どのように作られているのでしょうか?

メキシコでは指導者の競争も激しいので、5試合勝てない状況が続くと首が飛ぶ、ということが普通に起きます。
なので、思い切って若手をデビューさせるのは、監督の人柄や、チーム作りについての哲学次第です。

しかし、10代の段階でデビューしている選手たちには共通点があるように思います。
それは、競争の環境下で作り上げられた人間性です。

ここでいう人間性というのは、堂々とした振る舞い、どんな状況でもビビらない精神を持ち、戦う準備ができていることです。
メキシコでは、若手選手でもベテラン選手に向かって自分の意見をぶつけ、言い合いをしている光景をよく見かけます。

チームの中でも競争があり、その競争に勝てないと自分の居場所を失ってしまうのです。そこに若手、ベテランは関係ありません。中南米や南米にはそのことをよくわかっている選手が多いですね。

To Be Continued…(vol.3は2021/8/7(土)投稿予定)

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