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-メキシコの選手育成についてお話しを伺いたいと思います。メキシコ国内には沢山のクラブがあり、クラブによって哲学などもバラバラだと思いますが、メキシコという国レベルでの育成では、何に重きを置いているのでしょうか?
2019年にメキシコ代表のトップが変わりました。それに伴い、新しい育成メソッド部門も設立されました。
その新しい部門が目指しているのは、攻撃的なサッカーを攻守ともに展開する、というスタイルです。
守備では、前からアグレッシブにプレスをかけてボールを奪う。攻撃では、ボールを繋いで攻めるものの、優先順位はゴールです。
チャンスと見たらどんどん前に出て、ゴールに仕掛けていこう、というアイディアを掲げています。
ボールを大事にしながらも常に前に攻める……
クラブと代表が連携を取り、これらができる選手のピックアップが始まりましたね。
-メキシコサッカーの育成環境はどの程度整備されていますか?
メキシコ1部リーグに所属しているクラブの育成環境は、整備されたピッチにクラブハウス、寮や食堂がついていてものすごく良い環境です。
しかし、プロになって活躍するほとんどの選手が、でこぼこのグランドや、土のグランドなどと、整備されていない環境で育ちつつ、13、15歳くらいで、1部のクラブにスカウトされています。
メキシコリーグは大きく分けて、二つのクラブがあります。
一つは、1部リーグに所属する環境がかなり整備された中で行われるリーグに所属するクラブ。
もう一つは、スペイン語でキンタディビシオン(5部)、クアルタディビシオン(4部)とか、テルセイラディビシオン(3部)という環境が整備されていない下部リーグのクラブです。
その下部リーグでは、グランドレベル、審判のレベルも全く整備されていません。
劣悪な環境下で揉まれながらプレーしている選手、まだ15歳だけど19歳の選手に混じってプレーしている選手などが多くいます。
-たとえ劣悪な環境でプレーしていたとしても、十分にチャンスがあるんですね。
チャンスが平等にあるというよりは、プレーする場が沢山あるようなイメージです。
プレーする場所が沢山あるので、自分のプレーを見てもらえる機会が増えます。
例え、自分が1部リーグのU15でプレー出来ていないとしても、下部リーグで活躍をしていればチャンスは大いにあります。
下部リーグには、そのチャンスをうかがっている選手が何人もいるのです。
年上の選手との激しい競争の中で磨きがかけられます。
そして、16歳や17歳になると1部のクラブにスカウト、育成の仕上げをしてからプロデビューする例が最近は増えてきました。
-南米や中南米では、スカウトが草サッカーを見ていて、いい選手を見つけるとクラブに連れて行く、という話しを聞いたことがあります。メキシコでもそのようなことは実際にあるでしょうか?
そこまで劇的なサクセスストーリーはあまり聞きません。
ですが、メキシコリーグ1部のクラブのほとんどが、国内全土にスカウト網を持っており、定期的に集団セレクションを開催しています。
セレクションは、目の行き届かないような小さい町などでも開催します。
埋もれかけていたタレントを発掘するためです。
-南米や中南米では、早い段階でデビューして活躍している若手選手が多い印象があります。日本だと大学を卒業し、22歳でやっとプロデビュー、という場合が多いです。若い選手を躊躇なくデビューさせられる環境は、どのように作られているのでしょうか?
メキシコでは指導者の競争も激しいので、5試合勝てない状況が続くと首が飛ぶ、ということが普通に起きます。
なので、思い切って若手をデビューさせるのは、監督の人柄や、チーム作りについての哲学次第です。
しかし、10代の段階でデビューしている選手たちには共通点があるように思います。
それは、競争の環境下で作り上げられた人間性です。
ここでいう人間性というのは、堂々とした振る舞い、どんな状況でもビビらない精神を持ち、戦う準備ができていることです。
メキシコでは、若手選手でもベテラン選手に向かって自分の意見をぶつけ、言い合いをしている光景をよく見かけます。
チームの中でも競争があり、その競争に勝てないと自分の居場所を失ってしまうのです。そこに若手、ベテランは関係ありません。中南米や南米にはそのことをよくわかっている選手が多いですね。
To Be Continued…(vol.3は2021/8/7(土)投稿予定)