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–京谷さんご自身は、なぜ指導者になられたのでしょうか?
元々は、サッカーの指導者になりたかったんです。
2012年9月のパラリンピックで現役引退して、その年の12月にサッカーのC級コーチのライセンスを取りに行くと決めていました。ところが、その翌年、僕が北海道にいた時のサッカーの選抜チームのコーチだった人から、声をかけられました。
ありがたいお話だと思い、千葉の大学のコーチになりました。C級でもそうなんですけど、サッカーのB級ライセンスを取る時「指導者とは?」といったテーマが出てきました。
いろんなことを勉強しながらやったら「これ結構面白いな」って思うようになりました。
–2015年、車いすバスケットボール日本代表のアシスタントコーチに就任なされました。
その頃、車いすバスケットボールでは、及川(晋平)が代表を率いていたのですが、アジアパラリンピックや世界選手権で結果が出なくて、韓国にも3連敗している状況でした。
それで、当時の技術委員会の方にも声をかけられたんですけど、サッカーの指導をしていることを理由にお断りしたんです。大学の常勤コーチがいなくなるなど、厳しい状況でした。
その後、僕も少し楽になった時に、また及川と技術委員会の方から話があって、手伝ってくれないかっということを言われました。その前まで一緒にやっていた選手たちから、苦しい胸の内を語られていましたので、なんとかしたいなという思いもちょっとありました。
それで「俺でよければ手伝うよ」ということで、2015年の5月から、日本代表のアシスタントコーチという形で関わるようになりました。サッカーの指導者としてやっていく予定でしたが、たまたま両方の指導者という形になりました。
–パラリンピックで決勝戦まで進出し、車いすバスケットボールが凄く盛り上がりました。ご自身は、1993年のJリーグ開幕によるサッカー人気の急騰もご経験されています。
本当に、東京2020の開催が決まってから、選手も周りの環境も、お祭り騒ぎみたいになりました。何も成し遂げてないのに、なんか自分達が何か成し遂げたような顔をしている選手もいました(笑)。
それって「昔の自分と一緒だな」と思っています。プロサッカー選手になって、自分は何も大したことしていないのに、キャーキャー騒いでくれているような周りの環境にただ喜んでいた、そういう状況と凄く似ています。
僕はそこで1回(交通事故で)失敗したので、選手たちには、今やるべきことが何かということを常に言い続けてきました。銀メダルを取って、ちょっと成し遂げてしまったことで、勘違いする選手がちょっと出てきています。
まあ、それはそれでいいんでしょうけど、今までなかった状況が現に起きているので、一歩間違えると危ない方向に行ってしまうなと思っています。チームとしても、個人としてもです。
ここは、本当に気をつけなければいけないところですね。また次に進まなければいけません。
–サッカーと車いすバスケットボール、両競技の選手の気質の違いなど、何か特徴的なものは、ありますでしょうか?
同じ「スポーツ」をやっている選手同士なので、基本は一緒だと思います。みんな負けず嫌いですし。
僕は車いすバスケットを始めた時、サッカーと似ていると思いました。スペースを扱う、スペースを作り出す競技だなって。
ただ、もうちょっと若い、それこそU23に入りたての年代ですが、その辺には、常に周りの人が手伝ってくれて、助けてくれて、自分でやれることが少なかった、という選手たちがいます。何でも人任せ、他人任せみたいな感じの選手が多く、最初は凄く困りました。
でも、それを少しずつ変えていって、少しずつ自立させるようにしてきました。今では、ある程度まで、負けず嫌いな選手たちに育ってきてくれています。
やっぱり、どうしても入り口がサッカーとは違います。障がいを負って、何もできなかったところから、ちょっとずつできるようになってくるのですが、最初は自分から何かするということ、飛び込むことを恐れてしまうというか。
なかなか一歩踏み出す勇気がない子たちが、障がいを持っている子ども達には多いのかなという風に思います。
–技術的に、サッカーから取り入れた指導方法もあるかと思います。
今はサッカーの指導に行く機会が減っているんですけれど、何か使えるなと思ったら、それをバスケの合宿で取り入れてみました。サッカーには状況判断系のトレーニングが多いんですが、バスケットには正直ないんです。
ボール回し「鳥籠」と言われる4対2とか5対3とか、そういったものも、いろいろ条件設定を変えながらやったりしました。ボールを2個使ったりする練習など、サッカーからヒントをもらいました。
–効果は如何でしょうか?
やっぱり、判断が早くなりました。ボールをポンポンポンって回して最後フィニッシュというシーンが、パラリンピックのイギリス戦でも出ましたし、バウンズパスを使うシーンも結構ありました。
サッカーから持ってきたトレーニングが、実際にパラリンピックの試合でいくつも見られたというのは、一定程度、サッカーからの効果があったのかなという風に思います。
–競技を問わず、身体能力という言葉が使われます。京谷さんにとって、身体能力とは、どのようなものなのでしょうか?
やっぱり、鳥海連志というあの選手が、1番最初にパッと思い浮かびます。
スピードの中にしなやかさがあったり、バネがあったりとか、そういったものです。それと、身体とは全て含まれることなので、頭の柔軟性も持ち合わせている選手として、最初にパッと思い浮かぶのも鳥海となります。
身体能力……難しいですね、考えると。でも、パッと見た時に、身体能力というか、能力ありそうだなっていう子は、だいたい僕が見ると、バネと柔軟性がある子かなって思います。
それが身体能力ということに繋がるのかなあと。だいたい、選んだ選手は、何かしら、そういうバネとかしなやかさがあるなあと思います。
To Be Continued…(vol.3は2022/1/30(日)投稿予定)