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ボリビア代表GK / カルロス・ランぺ 実戦!ゴールキーパークリニック 番外編『キーパーコーチという存在』

毎月media CONNECTにて、GKに特化した内容のインタビューに応えてくれいている、GK育成スペシャリストのエルナン氏。

今回は、彼がパーソナルトレーニングを提供している、現役ボリビア代表GKのカルロス・ランペ選手を紹介してくれました。

ランペ選手は、ボリビア代表メンバーとして来日経験があり、日本代表と試合もしています。そんなランペ選手に「現代のGKにとって大切なこと」「エルナンコーチから学んだこと」「日本代表の印象」「今まで対戦してきた規格外のプレイヤー」などについて話してもらいました。

中島翔哉やメッシ、ネイマールといった話題もあがる充実の内容! フィールドプレーヤーはもちろん、指導者の方にも必見の内容となっています。

▼カルロス・ランペのプレー集▼

所属チーム:CAべレス・サルスフィエルド
生年月日:1987年3月17日(35歳)
出身地:ボリビア
経歴:2006 ウニベルシタリオ・デ・スクレ/2007 クラブ・ボリバル/2008 グアビラ/2009-2010 ウニベルシタリオ・デポルテス/2011-2012 クルブ・ボリバル/2013-2015クルブ・サンホセ/2015-2016 スポルト・ボーイズ/2016-2019 CDウアチパト/2018 ボカ・ジュニアーズ/2019 クルブ・サンホセ/2020 クルブ・オールウェイズ・レディ/2021-CAべレス・サルスフィエルド

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–GKとしてプレーすることになったきっかけを教えてください

きっかけは私の父親です。父が友達と草サッカーをする時に、いつも私をグラウンドに連れて行ってくれました。私がプレーし始めたのは7歳くらいの時ですね。

彼らはプレーをするたびに何かを賭けるのですが、その試合で父はGKとして私をプレーさせたんです(笑)。「賭けの試合で子供をGKにするなよ!」と彼の友達に言われていましたが、そのセリフを言った彼も私に本気でシュートを打ってくるような環境でサッカーを覚えました。

ですが、大人と本気で勝負できることが、とても楽しかったです。

FWやトップ下といったポジションでプレーすることもできたかもしれませんが、父にダメだと怒られましたね。今となっては感謝していますが(笑)。

–かなり独特な環境でサッカーを始めたんですね(笑)。では、あなたのキャリアを振り返り、どのような取り組みが「プロ選手になる」ことを後押ししたと思いますか?

さまざまなプロ選手のプレーを見て勉強したことかと思います。自分が大きなミスをしないよう、彼らがどのような処置(プレー)をしているのか、というところを重点的に観察していました。個人の取り組みでいうと、自分のミスを振り返ることを常に意識していましたね。

自分はどのようなミスを起こしやすいのか、なぜ自分はミスをしてしまったのか、を絶えず分析することでプレーに安定感がでるようになります。

あとは、メンタル面の強化やケアですかね。メンタルは、サッカーにおいて1番大切な要素です。サッカーにミスはつきものなので、ミスをした後でも良い精神状態を保たなければいけません。

なので、ミスをした後には必ず「失敗を受け入れ、新たな気持ちでプレーする」このように心掛けています。自分がどのような心理状態でも、試合は90分間続いていきます。チームを救えるような心理状態を維持できるようになるだけで、プレーの質は大きく向上すると思いますよ。


オンライン取材にも気さくに答えてくれたランペ選手

–メンタルをケアすることがとても重要なのは、イメージがつきます。キーパーは常に失点と隣り合わせです。メンタルを安定させるのが、かなり難しいポジションだと思います。メンタルを安定させる秘訣を教えてください

余計なことは考えず、まず「自分がやるべきことをする」ことが一番重要です。

GKは試合中、短い時間の中で判断し、決断しなくてはいけません。フィールドプレーヤーのミスは大きなものでなければ致命的ではありませんが、GKのミスはどんな些細なことでも致命傷になりかねません。

試合中の私は「ボールの位置」「味方のポジショニングと体の向き」に対して最も注意を払い、次に起こる可能性すべてを予想するようにしています。いいプレーをするためには、いい視野を持ち、ボールとプレーに関与している選手を正しい体の向きで観察する、ことが欠かせないのです。

サッカーは勝ったり負けたりするスポーツです。常に勝ち続けることはできないということを念頭においてプレーする必要があると思います。負けることよりも、ミスを恐れてピッチに立てなくなることの方が遥かに恐ろしいことです。

もし試合に負けてしまったら、その試合で犯したミスや自分に足りないものを徹底的に分析、次の日からはそこを改善するための練習をします。批判されることもありますが、それもサッカーの一部です。試合は続いていきます。負けることもサッカーの一部なので「早く失敗から立ち直り、いかに自分を成長させていくか」を考えながら取り組んでいくと、メンタルを保ちやすくなるのではないでしょうか。

–エルナンコーチのトレーニングを受けて変わったことを教えてください

彼とのトレーニングはとても効果的だと感じています。

なぜかというと、パーソナルトレーニング前に私の試合でのプレーを分析し、ミスについて解説してくれます。そして、また同じミスが起こらないよう、的確に指導してくれます。GKがミスをしてしまうと勝敗に大きく関わるので、どんなに些細なミスでも見逃すことはできません。

プロで何年も指導していると、新たに学び、向上しようという意識が薄れてしまう指導者もいます。ですが彼は、違うんです。日々学び続ける指導者です。

時には、選手よりも学ぶ意識が強い時があり、自分でも気づかない視点からアドバイスをくれたりします。信頼してトレーニングを依頼できますね。

エルナンコーチとランペ選手

–肌で感じている「現代GKに要求される能力」について教えてください

「ゲームの流れを読む力」と「フィールドプレーヤーと同じように、足を使ってゲームに参加する能力」ですね。プレーしていて感じるのは、ひと昔前のGKよりもかなり多くの仕事を要求されているということです。

たとえば、昔のGKはゴールを守る存在で、フィールドプレーヤーのような足元の技術や、ロングフィードパスの精度はそこまで要求されていませんでした。

しかし現代のGKには、チームの一員としてパス回しに参加することも、時にはロングフィードからチャンスを作ることさえ求められています。

–2019年にボリビア代表として来日し、キリンチャレンジカップで日本代表と対戦していますよね。その時に感じた日本代表の印象と、ランペ選手にインパクトを与えた選手を教えてください

日本代表は、テクニックに優れている選手が多く、スピードがあり、直線的な攻撃を仕掛けてくるという印象を持ちました。確かあの試合は0-1で敗れてしまいましたが、もっと点を取られていてもおかしくなかったと記憶しています。

あの試合をきっかけに、日本代表というチームに関心が湧きましたね。その試合で印象に残ったのは、8番をつけていた、中島翔哉選手です。彼はとてもいい選手ですね。

高いテクニックを備えていながらもスピードがある、次に何をしてくるか読めない選手でした。その試合では彼に得点を決められましたし、かなり手を焼いた記憶があります(笑)。

▼その時の試合ハイライトはこちら▼

–中島選手が印象に残ったんですね。彼はCONNECT(media CONNECTの運営元)でマネジメントしている選手でもあるんですよ。ランペ選手は、キャリアの中でそうそうたるメンバーと対戦してきたと思います。今まで対戦した選手の中で、手を焼いた選手、怖さを覚えた選手はいますか?

正直、恐怖を感じたことはあまりありません。ですが、対戦して改めて驚かされたのは、メッシ、ネイマール、エンバペ、でしょうか。

彼らのプレーはとにかく早いです。動くスピード、考えるスピード、思考を実行するスピード、どれも常人には真似できない次元です。あれほどまでに早いとは思ってもみませんでしたね。

また彼らは「動き方」「空いているスペース」「相手選手と味方選手の状況」を瞬時に理解し、驚くほど適切な選択を実行するのです。

一流の選手として技術力の高さは言うまでもないですが、それ以外の能力が彼らにはあるのです。

–最後に、日本で頑張るGKたちにメッセージをお願いします

まずは、プレーすることを楽しんでください。ミスをしないGKはいません。

大切なことは「ミスから学ぶ」ことです。今日負けてしまっても、明日勝てばいいのです。勝つことは最高の出来事ですが、負けることは最悪の出来事ではありません。

毎日少しずつ、成長することが上達への近道ですよ。頑張ってください。

End(お読みいただきありがとうございました。完 )

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